電子印鑑について

帳簿、決算・取引書類保存の電子化で業務効率の向上へ ~インボイス制度への効率的な対応~

企業がテレワーク率を高めていくため、「印鑑」の廃止に向けて検討する企業が非常に増えています。また、2020年6月に内閣府・法務省・経済産業省が公表した「押印についてのQ&A」では、企業間の契約書において押印は必ずしも必要ないという見解が示されています。法的には新たな考え方が示されたということではありませんが、非効率な出社を減らし、働き方改革を推進する狙いがあるようです。ただし、とくに企業間取引における重要な取引では、真実の作成者により作成されたことの証拠力が求められるといえます。ここで、最近、在宅でも対応できる電子印鑑が話題になってきています。

電子印鑑には、電子署名付きのものと、電子署名が付いていないものがあります。
電子印鑑を検討する前に、まずは、電子署名についてご説明したいと思います。

電子署名は、前回ご説明したeシールと対比すると、eシールが組織名を表示するものですが、電子署名は個人名を表示するという役割があります。
電子署名法2条に、電子署名の要件が定められています。

  • 電子文書ファイルに署名データを別途施す措置であること
  • 作成者を表示するものであること
  • 改ざんが検知できること

電子署名の仕組みは以下の図の通りとなっています。電子証明書に作成者の情報が内包されており、また暗号化された情報を、証明書に付与されている公開鍵により復号し、改竄の有無も確認できる仕組みです。

電子署名の仕組み

※出典:電子署名・認証・タイムスタンプ その役割と活用(総務省)

この様な電子署名には、幾つかの方式があり、以下分類を示します。
昨今は、自身で電子署名を付与しなくても、クラウド事業者に署名をしてもらう立会人型も認められると言われ始めています。

<電子署名の分類>

電子署名の分類

なお、2020年9月に総務省・法務省・経済産業省が公表した「電⼦署名法3条に関するQ&A」では、“サービス提供事業者が利⽤者の指⽰を受けてサービス提供事業者⾃⾝の署名鍵による暗号化等を⾏う電⼦契約サービス”も一定の要件を満たす場合には、電子署名法第三条の“本⼈による電⼦署名”に該当するという見解が示されています。

次に電子印鑑についてご説明します。
電子印鑑には、印鑑を電子データ上でも使えるように開発されたもので、種類は、単純に印影を画像化したものと個人を識別するための情報を付与したものの大きく2つに分かれます。
前者には、個人の識別情報が付与されておらず、法的効果は非常に限定的になります。このため社内文書か、取引先と取り交わす文書でも重要性の低い文書に限って利用することも考えられます。
後者には、個人の識別情報が付与されており、一定の法的効果があります。個人の識別情報で最も法的効力が高いものが電子署名で、文書の性質、金額などから、重要性が高く、利⽤者間で必要とする⾝元確認レベルが高い文書に利用することが考えられます。電子印鑑の分類について以下に示します。

<電子印鑑の分類>

電子印鑑の分類

個人識別情報ありの方法のうち、メール認証、システム認証は、電子署名法の“本人性” “原本性”の要件を満たしますが、“本人による電子署名”の要件を満たさないため、真正に成立したものとする推定の効力が生じないことになります。
電子証明書付電子署名の方法を利用すると、証明書発行手続が必要なため、電子印鑑のその他の方法に比べコストがかかりますが、本人が作成したことの証明力は高くなります。

用途・目的に応じて、電子署名付きの電子印鑑・電子署名無しの電子印鑑のどちらを使用するか、もし電子署名が無い印鑑を使うのであればどの程度のものを使うか、使い分けることが大切と言えます。