会計システム選定の戦略的アプローチ ~ペーパーレス化と会計基準対応の調和~

ペーパーレス業務を検討する際に、通常は、既存システムをできるだけ改修しないという方針があると思います。
しかし、こうした方針があると、基本的に、ペーパーレスによる業務の効率化の大きな制約となります。

そこで、新システムを導入して、ペーパーレスによる業務の効率化の方法を徹底的に検討して、そのための機能を数多く実装しようとする場合もあります。こうした方が、ペーパーレスによる業務の効率化は、格段に向上します。

今回は、新システムを導入してペーパーレス業務を検討するという想定で、新会計システムを選定する場合の留意点をお伝えしたいと思います。

1,会計システムの選定(パッケージかスクラッチか)

経理業務を支えるシステムといえば、まず会計システムが浮かぶと思います。今回は会計システムの選定という観点から検討したいと思います。
新しい会計システムを導入する場合、できるだけ多機能で、使い勝手が良く、安いものが欲しいと考える人が多いと思います。
そういった視点以外に、システム選定に関して持つべき視点を4つ紹介したいと思います。

  1. まず、いわゆるパッケージが良いのでしょうか? スクラッチのシステムが良いのでしょうか?
    よくいわれていますが、パッケージというのは、いわば「既製品」です。
    スクラッチというのは、いわば「オーダーメイド」です。独自業務が多い場合は、スクラッチのシステムが適切といわれています。
    既製品の方が基本的に安いといえます。すでにある程度でき上がっているからです。スクラッチのシステムの方が、一般的に高いといえます。基本的に一から開発しないといけないからです。
    したがって、一般論としては、「安いスクラッチシステム」という選択肢は、まずないと考えた方が良いと思います。オーダーメイドの方が自社のために独自開発したシステムなので、使い勝手が良いはずですが、その反面で高くなると考えるのが自然だといえます。
    逆に、これも一般論ですが、「高いパッケージ」というのは、採用しにくい選択肢といえます。パッケージというのは、自社向けのシステムではなく、一般向けのシステムで、細かい所は多目に見て使うこともあるからです。高いお金を払うのであれば、自社向けにつくられたスクラッチシステムの方が自然な選択肢となることが多いです。
  2. では、仮に、パッケージを採用しようと思った場合、グローバルなパッケージか日本発のパッケージか、どちらが良いのでしょうか?
    ここで「業務水準」ということを考えたいと思います。業務水準とは、業務の自動化の度合いや、管理業務のきめ細やかさを指します。
    日本の会社の業務水準は、世界的な視点で考えて、高いといえます。皆様の会社を例に考えていきましょう。日本の親会社と海外の子会社では、どちらの業務水準が高いでしょうか? 日本の親会社の業務水準の方が高いのではないでしょうか。
    また、グローバルのパッケージを導入する場合、「日本の親会社での導入は大変で、海外子会社での導入は比較的容易」という話を聞いたことはありませんでしょうか? これは、業務水準を考えるとわかりやすいです。グローバルのパッケージが想定する業務水準はあまり高くなく、そういうパッケージを使って、日本の親会社の高い業務水準を実現しようとすると、パッケージと実現したい業務とのGAPが生じやすく、多くの追加開発が必要になる傾向があるようです。こういったこともあり、「日本の親会社での導入は大変で、海外子会社での導入は比較的容易」となることが多いようです。
  3. 次に、分析を容易に実施したいというニーズもあるかと思います。この場合、グローバルのパッケージの方が、例えばテーブル構造もシンプルで、BI的な分析もしやすい場合が多くあります。自社がどの程度の分析業務を実施したいかを考え、そのためには、どういったテーブル構造が良いかをイメージして、そのイメージに近いシステムを選んだ方が良いと思います。
  4. さらにパッケージを採用するとしても、追加開発が全くないというケースも極めて稀です。追加開発が必ず発生すると考えた場合、追加開発が容易か、つまり開発基盤があるかないか、開発基盤は使いやすいかなどの視点も重要です。使いやすい開発基盤があるか否かにより、追加開発の生産性・保守性に大きな影響を与える場合もあります。

このように、新会計システムの選定の際し、さまざまな視点に注意しなければいけないことがおわかりいただけるかと思います。

2,新会計基準・開示基準等への適合

会計システムなので、当然に、会計基準に準拠していなければいけません。
ここで、会計基準等の動向を紹介しておきます。こうした新基準への準拠にも留意して、システムを検討する必要があります。
企業会計基準委員会の資料などから、主要なものを紹介しておきます。

  1. リース会計基準
    IFRSと整合性のあるものとするために、借手のすべてのリースについて資産および負債を認識する会計基準とするための検討を行っています。公開草案が公表されており、2024年3月までに会計基準が公表される見通しです。
  2. 金融商品に関する会計基準
    IFRSと整合性を保つために、予想信用損失モデルに基づく金融商品の減損についての会計基準の開発に向けて、検討を行っています。
  3. 四半期報告書の制度の見直しへの対応
    金融商品取引法上の四半期報告制度の見直しへの対応として、改正後の金融商品取引法上、半期報告書制度に対応する会計基準等について検討を行っています。
  4. グローバル・ミニマム課税に関する改正法人税法への対応
    グローバル・ミニマム課税に関する改正法人税法への対応として、企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」等の会計基準等の改正の要否について検討し、実務対応報告第44号「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適当に関する当面の取り扱い」の今後について検討しています。
  5. サステナビリティ開示基準
    2023年6月にIFRSサステナビリティ開示基準が公表され、これを受けて、日本でもサステナビリティ開示基準が検討されています。2023年度中に公開草案の公表、2024年度中に確定基準の公表を予定しています。

こうした基準の動向にも目配りをして、新システムの新基準への充足度合いにも留意する必要があります。Webサイト、書籍、セミナーなどにより、積極的な情報収集が望まれます。

3,税法への適合

会計システムは、当然に、税法への適合も求められます。この点、グローバルのパッケージは日本の税法への適合が十分ではない場合があります。
日本発のパッケージは、基本的に、日本の税法には非常に適合していますが、海外の税法には必ずしも適合していません。何カ国もの税法への適合、例えば何カ国もの申告書の出力に対応するのは、パッケージのベンダーにとって負荷が高いといえます。グローバルのパッケージについても同様で、本国周辺以外の国々の税法への適合は、非常に限定的となります。
ペーパーレスのためには電子帳簿保存法に対応する必要があります。
電子帳簿保存法も税法の一つであり、対応する必要があります。要件はさまざまありますが、例えば検索機能の要件も独特で、範囲検索、ブランクデータの検索などにも対応する必要があります。この点、グローバルのパッケージは対応できていない可能性もあり、注意が必要です。

今回、新会計システムを選定する際の視点について、いくつか紹介させていただきました。
何となくシステムを選定するケースもあるようです。業務の効率や精度を向上させ、自社の競争力を向上させるためにも、腰を据えた「システムの選定」を行うことをお勧めします。
高価な買い物なので、購入した後、すぐ「他のシステムに変えよう」ということは難しいといえます。したがって、慎重な判断が求められます。
どのシステムが良いかを評価し選定する作業は、自社の業務しか知らないと実は難しいです。第三者の知見を借りると、比較的、容易に判断できると思われます。
新システムの導入にあたり、業務水準の劇的な向上と自社の競争力の格段の向上をめざしていたものの、それが夢に終わり、ベンダーにクレームを言うことになり、プロジェクトが頓挫して、妥協のうえ、不満足な新システムを導入する事例も見たことがあります。腰を落ち着けて、しっかり選定する必要があるといえます。