サステナビリティ開示基準導入支援
2025年3月5日に我が国のサステナビリティ開示基準が公表されて以降、本コラム執筆日(2025年9月22日)までに11本の補足文書と50本の参考文書(SSBJハンドブック)が公表されており、有価証券報告書の記載にSSBJ基準の適用が義務化(一部企業)される2027年3月期には、実務担当者が理解しておく必要のある基準及びガイダンスは膨大なものとなることが予想されます。そこで、本コラムシリーズではSSBJ基準及び関連文書の内容を実務対応の観点から解説します。
第3回の今回は、「関連する財務諸表」について説明します。
本コラムで扱う規定 | |
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サステナビリティ開示基準の適用 | 第4項(5)、第7項、第8項、BC33項~BC35項 |
関連する財務諸表 |
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サステナビリティ開示基準の適用 第7項サステナビリティ関連財務開示は、関連する財務諸表を特定できるようにしなければならない。サステナビリティ関連財務開示と同じ文書において関連する財務諸表が報告されていない場合、次の事項を開示しなければならない。
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サステナビリティ開示基準の適用 BC33項サステナビリティ関連財務開示は、関連する財務諸表に含まれる情報を補足し、補完するものであると考えられる。本基準は、主要な利用者が関連する財務諸表を特定できるようにするため、サステナビリティ関連財務開示と同じ文書において関連する財務諸表が報告されていない場合、当該財務諸表の入手方法を開示しなければならないとしている。 |
サステナビリティ開示基準の適用 BC34項本基準では、サステナビリティ関連財務開示に関連する財務諸表がどの会計基準に準拠して作成されているかにかかわらず、本基準を適用しなければならないとしている。そのうえで、主要な利用者がサステナビリティ関連財務開示を理解するためには、関連する財務諸表の作成にあたり準拠した会計基準を理解することが必要であると考えられるため、サステナビリティ関連財務開示と同じ文書において関連する財務諸表が報告されていない場合、当該会計基準の名称を開示しなければならないとした。なお、サステナビリティ関連財務開示と同じ文書において関連する財務諸表が報告されている場合は、関連する財務諸表の作成にあたり準拠した会計基準は開示されていると考えられる。 |
サステナビリティ開示基準の適用 BC35項本基準は、サステナビリティ関連財務開示について、関連する財務諸表とあわせて開示しなければならないとしているものの、主要な利用者が関連する財務諸表を特定できるのであれば、サステナビリティ関連財務開示の有用性は大きく変わらないと考えられるため、必ずしも同じ文書において報告することは要求していない。 |
実務対応 |
SSBJ基準が有価証券報告書の「サステナビリティに関する考え方及び取組」を記載するにあたり適用されている場合、有価証券報告書には関連する財務諸表が含まれることになるため、当該規定への対応は不要となります。一方、「サステナビリティ・レポート」等の任意開示書類でSSBJ基準を適用したサステナビリティ関連財務開示を行っている状況において、当該開示書類に(関連する)財務諸表が含まれていない場合には第7項の開示が必要となります。この点、任意開示書類のなかでも「統合報告書」等の書類には関連する財務諸表が含まれている場合が想定されるため、任意開示書類においてサステナビリティ関連財務開示を行っている場合に必ずしも第7項の開示が必要になるとは限らない点に留意する必要があります。 |
関連する財務諸表 |
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サステナビリティ開示基準の適用 第8項サステナビリティ関連財務開示において、通貨が測定単位として特定されている場合、関連する財務諸表の表示に用いる通貨を使用しなければならない。 |
実務対応 |
本規定の「表示に用いる通貨」は国際会計基準(IFRS)上の表示通貨と同義と考えていただくとわかりやすいと思います。この点、日本基準には表示通貨に関する規定がないことから、有価証券報告書の関連する財務諸表は通常は「日本円(百万円、千円)」で報告されています。一方、IFRS任意適用企業や任意開示書類の開示では「日本円」以外が使用されることもあるため、SSBJ基準を適用している企業が当該状況に当てはまる場合には留意が必要となります。 |
今回は「関連する財務諸表」についての規定を解説しました。本コラムで扱った規定に留意が必要な企業は多くはないかもしれませんが、読者の皆様の所属企業が任意開示書類を通じてSSBJ基準を適用したサステナビリティ関連財務開示を行う場合には、規定違反とならないように注意が必要です。
※当コラムの内容は私見であり、BBSの公式見解ではありません。
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