【製造業の方は必見!】レガシーシステムからの脱却! 脱ホストを阻むハードルの乗り越え方

はじめに

製造業のお客様は、IoTやDXといったキーワードに代表されるようなIT技術の進化にともない、さまざまな改革・改善に取り組んでおられます。また、最近ではESGへの取り組みについて、市場からの注目度も高まっており、そうした動向を契機としてシステムの刷新を検討されているお客様も多いのではないでしょうか。
ただ、管理系業務システム(会計、人事給与など)はパッケージに置き換えたが、基幹系業務システムは長年にわたり自社要件をつくり込んできているため容易に置き換えができない、といった事情を抱えておられるお客様も多くいらっしゃいます。ビジネスの根幹をなす基幹系システムの刷新は、多くの関係部門を巻き込むこととなるため関係者間の利害が衝突することも少なくありません。
さらに長期間利用してきた自社開発システムを置き換える場合、これまで部門ごとの要求に従って実装してきた個別機能への対応が必要になるケースも多く、困難度は高まる傾向となります。
今回はホストコンピューターからERPシステムへの刷新プロジェクトにおいて大きな障壁となりうる「帳票」と「インターフェース(I/F)」などに焦点を当て留意点などを紹介します。

1.現行帳票の整理・削減

自社開発システムでは、部門ごとの要求に応じてさまざまな帳票が実装されているケースが多くありますが、これらの大半はERPシステムの標準機能にはなく、カスタマイズ要件となります。そのため、あらかじめ帳票の利用頻度や優先度といった観点から整理・削減・統廃合を行うことが、コスト抑制に大きく寄与します。整理・削減する際に重要な観点は「現状へのこだわりを捨てる」ことと、「ペーパーレス志向で検討する」ことの2点となります。以下具体例を紹介します。

  • 既存帳票がERPで出力できるかを確認する → ERP導入で多少なりとも業務が変わってしまうので現行どおりの帳票にこだわることは必要ないはずです
  • 業務の流れとして出力される帳票である → ERP導入を機にその業務自体をなくすことができないか、画面上の参照・承認で業務を成立させることができないかを検討するべきです
  • 管理帳票として利用頻度が高い → 必要な際に画面上で検索し、Excelなどで検索結果を出力できれば事足りるのであれば、帳票形式でなくても問題ないはずです
  • システムフローに基づく整理 → 各業務プロセスについて入力/処理/出力を整理し、必要な帳票および主要項目を割り付け、割り付けられなかった帳票の必要性を再検討します

2.I/F仕様の事前整理と要件検討

I/Fについては、既存の設計書などで仕様についての記載が更新・最新化されていないケースや、全体を把握している担当者がいないといったケースが散見されます。ERPシステムへの置き換えにあたっては、システムの全体像を整理して、I/F項目のマッピングを地道に行っていく必要があるため、情報システム部門の方の関与が非常に重要となります。なお、マッピングに関しては以下のように分類・整理していくことが一般的です。

  • グルーピング(同一用途の項目、類似項目があるがタイミングによって異なる意味を持つ項目 など)
  • 対応関係の相関整理(1:N、N:1、N:N など)
  • ロジックが必要な項目やハンド設定が必要な項目

3.マスタ設定・管理の重要性

自社開発システムの場合、部門ごとにマスタ登録をするケースが多く、部門とマスタの関連が明確ですが、ERPシステムではデータベースが一元化されているがゆえに1つのマスタを多部門で共用することになります。従ってマスタおよび項目ごとに主管部門を決定し、メンテナンスの責任所在を明確に定める必要があります。

4.導入するERPシステムの事前理解

ERPシステムの導入で各部門の業務がどのように変化するかを理解してもらい、現行システムの機能・画面へのこだわりをなくしたうえで、要件を検討していくことが理想です。少なくとも導入作業に主体的に関わることになるPJメンバーの方には導入作業開始前あるいは開始直後に、標準機能の理解を深めていただく必要があります。
選定時は候補となるERPシステムが「できること」に目が向きがちですが、あえて「できないこと」も把握するよう確認した方が良いといわれています。
具体的には、主要な要求機能に限定した簡易Fit & Gapを実施したり、候補ERPシステムを導入している他社情報を参考にしたりするなどの方法が挙げられます。

まとめ

これまで述べてきたとおり、自社開発システムからERPシステムへの刷新は非常な労力や困難さをともないますが、うまく置き換えができた際の効果も絶大です。弊社では多くのお客様に対してERPシステムの選定を支援してまいりました。今回紹介したテーマを含め、個別のご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。