【製造業の方は必見!】ERPリプレイスを成功に導くポイントとは? 概要編

はじめに

ERPを利用しているお客様が次期システムを検討する場合、バージョンアップ、新規リプレイスと、大きく2つの選択肢があります。バージョンアップに関しては、製品選定や要件整理といった手間が省けるメリットがあるものの、カスタマイズやアドオンの要件は再度対応する必要があるため、ボリュームが大きくなるとベンダー側の対応工数が膨大となり、思いのほか費用がかかってしまうというデメリットも発生します。そうであれば、新たなERPを導入することで、さらなる業務改善・効率化をめざすという判断をされるお客様も多くいらっしゃいます。そこで今回は、ERPシステムのリプレイスにおける留意点などを紹介します。

1.現行ERPの再評価

新システムの候補となるERPを選定するにあたり、まずは現行ERP導入プロジェクトの再評価を行うべきであると考えます。一般的には、QCDの観点で当時の計画項目ごとに実際との差の要因を分析する形で進めます。以下具体例を紹介します。

  • コスト増の要因分析(カスタマイズボリュームが増えた、本番稼働後に追加開発が相次いだ など)
  • カスタマイズ増の要因分析(自社固有要件の複雑さ・特殊さに起因、従来の業務慣行を変えることができなかったことに起因 など)
  • プロジェクト期間延長の要因分析(業務メンバーの繁忙期とプロジェクトタスクが重複、要件の全体整合に時間を要した、テストや教育に手間取った など)

これらのうち、例えば業務慣行を変えることができずカスタマイズを行った場合や、自社リソースに起因してスケジュールを延長した場合などは、新システム導入プロジェクトにおいても同様にリスクとなる可能性が高いという共通認識を持ってプロジェクト計画を立てる必要があると考えます。

2.新たなERPによる効果を最大化するためのポイント

せっかくERPの刷新を行う以上、さらなる効果(業務改善や業務効率化)を得ることを目的とするものと思われます。その効果を最大化するための3つのポイントを紹介します。

(1)候補とするERPの選択肢を定める

  • 国産ERPは、日本の法制度や商習慣を踏まえた標準仕様となっているケースが多い(下請法、有償支給、手形 など)
  • 海外ERPは、日本固有の機能が実装されていない場合も散見されるが、グローバルで導入・展開する場合に仕様が統一しやすい
  • 昨今は組立製造業にもプロセス製造業にも対応できるハイブリッド型のERPが多いが、とくにプロセス製造業の場合、その製造業種に特化したERPがある
  • 製品によってはバージョンアップを強要しないことをコンセプトとするERPもあり、バージョンアップ=余計なコストと捉えている企業にとっては魅力的なポイントとなる

(2)カスタマイズを最小化するための事前検討を行う(「1.」の再評価の結果を踏まえ、以下のような観点で検討する)

  • 「実現可能な姿(=Can Beモデル)」を再定義し、そのモデルに最も近い機能を要するERPを候補とする
  • カスタマイズ機能の要因分析と必要性の再検討を行う。とくに、カスタマイズしても運用後に不要としてもいいと判断し得る要件をできるだけ抽出する

(3)導入作業を計画どおり進めるために事前準備をする(「1.」の再評価の結果を踏まえ、以下のような観点で検討する)

  • 各部門のニーズを把握する。その際に新ERPで実装しなくてもいい要件(帳票やチェックプロセスが中心となるケースが多い)の抽出にも協力してもらえると理想
  • ニーズを目的と関係付け、分析し、重要課題を抽出する。目的との関係付けとは、省力化、生産効率化、LT短縮、棚卸削減、計画精度向上、市場変化への対応、製販連携強化などが想定される

3.自社と導入ベンダーの認識・立ち位置の違いを理解する

新たなERPを導入する際、多くは既存ベンダーではなく新規ベンダーへの切り替えがなされるものと思われます。このことは、お客様の業務や固有要件、現行ERP導入の背景・経緯についての理解がないところからのスタートとなることを意味します。したがって、お客様側は新ERPに現行ERPではできなかった+αの効果を期待するものの、一方のベンダー側は予定どおりの納期・コストで導入することに意識が向きがちとなり、相互で認識GAPが生まれます。そうした事態に陥ることなく、「2.」で述べた要件・計画をしっかり実現させるためには、お客様側の推進体制がしっかりと機能していることが重要で、それが成否の分かれ目となります。

まとめ

ERPシステムの刷新は、上記のポイントを押さえながら選定および導入作業を実施することで、想定していた効果を得ることができます。弊社では多くのお客様に対してERPシステム選定の支援を行ってきました。今回紹介したテーマを含め、個別のご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。