中古車販売大手が行っていたとされる保険金不正請求の問題が連日報道されています。@(アット)と隠語で呼ばれていた修理代金の売上や粗利に過剰なノルマが課せられていたことが背景にあるとされ、未達成の工場長は降格とする人事が常態的に行われていたということです。同社の外部弁護士がまとめた調査報告書によると、アンケートに回答した従業員の実に45%が不正に関与または不正の事実を見聞きしたことがあったということです。

人事制度が正しく設計され、評価制度がしっかりと運用できていれば、このようなことにはならなかったのではないかと感じます。

一般財団法人労務行政研究所の調べによりますと、2017年以降、等級制度の見直しを行った企業は3割を超えています。役割や仕事に基づく等級制度が拡大する流れを受け、評価項目・評価基準を見直した企業の割合は54.5%と過半数を超えています。

評価制度が適切に運用されないことは企業にとって重大なリスクにつながります。皆さんの企業はいかがでしょうか?評価基準が正しく理解され、運用されているか検証が必要です。

まずは、評価体系・評価基準のチェックです。評価体系は、社員を育成・活用するために集める情報を明示するものです。単に仕事の結果だけでなく、そのプロセスでの取り組み結果や、会社のミッションやバリューから発揮が期待される行動、あるいは絶対にしてはいけない行為などが設定されているかを確認しましょう。

次に、評価のプロセスが正しく運用できているか、運用結果のモニタリングが必要になります。評価により集められた情報は、その後の育成に活用されて意味のあるものとなります。昇降格や給与改定・賞与に反映するだけでなく、評価結果を本人へフィードバックし、その後の改善や目標達成につなげる。これによって、良い結果や行動は強化・継続され、不十分な結果は結果だけでなくそこに至る過程で必要な行動を含め改善していくというサイクルが生まれます。評価プロセスが正しく実行されているか、評価者だけでなく被評価者に対してもモニタリングを行い、制度を改善・定着化させていく活動が重要となります。

かつて2000年代に成果主義が広まった時、「結果良ければすべて良し」という考え方を助長する仕組みと問題視された時期がありました。今回の事件と重なる部分が多く、人事制度や評価制度は正しく設計され、運用できないと会社にとって大きなリスクとなることを改めて感じました。
少子高齢化という大きな課題を前に、「ジョブ型」人事制度への移行という大きな流れは変わりません。役割や仕事に基づく人事制度においては、その結果を適正に評価する仕組みが重要となります。

ミッション、ビジョン、バリューに基づく評価基準が、正しいプロセスで運用できていますか?今回の事件をきっかけに改めて考えてみてはいかがでしょうか。