連結経営管理基盤グランドデザイン
多くの会社の経理部門は、これまで記帳業務などの事務作業に忙殺されてきました。例えば、会計システムに欠けている機能を表計算ソフトのマクロで補ったり、表計算ソフトにシステムのデータを手入力し集計したうえでシステムにアップロードしたり、あるいはシステム間のデータ連携が不十分なため二重入力したり、紛失した紙の申請書を探すこともあると思います。
こうした状況が、DX化の進展により、一変します。
各種自動化処理およびAIの活用により、記帳業務などの事務作業の比率は極端に低減します。その結果、財務会計業務の品質が向上し、決算の遅延リスクも低減されます。
そして、記帳業務が短縮化されることにより、管理会計領域における分析業務に注力できるようになります。例えば、分析軸の検討、BS管理の推進などが挙げられるでしょう。昨今、ROIC経営の重要性が脚光を浴びていますが、こうした流れが背景にあると考えられます。
また、財務数値の予測値の算定など、将来の会計数値の算定に力を注ぐことも可能になり、経営の意思決定支援の比重を高めることができるといえます。
経理部門は、DX化の進展により、「記帳屋」としての役割から、会社の分析・経営意思決定を支援する役割にシフトするといえます。
こうした変革は、親会社だけで行われることでしょうか?
親会社の経理部門には、グループ各社の経理部門を支援する役割もあり、グループ各社のDX化が遅れると、親会社の経理部門の業務は、グループ各社の記帳業務の支援の比重が高まります。したがって、グループ各社のDX化の進展およびそれによるグループ各社における経理部門の役割の高度化も重要になります。
つまり、経理部門の役割の高度化は、親会社単体で検討するのではなく、グループ全体で検討すべき項目であるといえます。
ここに、グループ各社の経理業務標準化の必要性があります。
「標準化により効率化を進める」という言葉を聞くことがあります。今一度、この意味について考えてみたいと思います。
グループ会社ごとにそれぞれ業務を工夫することで、個社における業務が「効率化」されます。この「効率化」は、グループ各社の細かい事情を加味して行われるので、「個別最適」が追求されることになります。そのため、グループ各社の業務を管理する業務などの「全体最適」の観点から考えると、かえって業務が複雑になります。そのため、グループ各社の業務を標準化することにより、グループ各社を管理する業務などを効率化する必要があります。この場合、「個別最適」を一定程度犠牲にして、「全体最適」を追求することになります。
「標準化により効率化を進める」ということには、こうした意味合いがあるので、標準化を行い「全体最適」を追求する場合、業務の「個別最適」とのバランスを取る必要があるといえます。
また、所在地域などにより業務の慣習、税法、会計基準が異なる会社間で業務を標準化するのは、明確な限界があることも念頭に入れておく必要があります。
そして、業務の「標準化」を達成するためには、統一会計システムの必要性が生じます。
グループ各社の経理業務が一定程度標準化された後、さらに標準化を推し進めるには経理業務のインフラともいえる会計システムの統一を検討する必要があります。
とくに、グループ各社の経理業務を集約しシェアードサービスセンターの設立などを計画している場合は、効果が大きいと思われます。
シェアードサービスセンターの担当者は、複数のグループ会社の経理業務を担当することもありますが、この時に、さまざまなシステムを使っていると、担当者は複数のシステムに習熟しなければならず、業務が煩雑になるので、とくに統一会計システムの要請が強いといえます。
統一会計システムを導入し、業務が標準化されると、業務が全体的に効率化されるだけではなく、グループ各社でのローテーションが容易になります。ローテーションによる幅広い業務経験が各担当者のスキルの向上につながり、経理業務が全体的に底上げされる効果も期待できます。
経理部門の役割の高度化のためには、DX化を進展させ、統一会計システムを導入し、グループ各社における業務を標準化し、さらなる効率化を進める必要があります。そうすることで、経理部門は会社を参謀として支え、会社のさらなる発展に大きく貢献できるようになるといえます。
業務の標準化および統一会計システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか?