そろそろ3月決算の会社では、来期の予算検討がスタートした頃ではないでしょうか。
中期経営計画や年度予算の作成において、多くの企業がKPI(キー・パフォーマンス・インディケーター)を設けています。連結売上高、連結営業利益、固定費削減額、在庫金額削減額といった金額ベースの指標や、ROE、ROA、在庫回転率等の 比率ベースの指標をKPIとして設定されることが多いです。
こうしたKPIを設定して進捗を管理することは、経営管理において有用なことですが、達成出来たか出来なかったかの結果だけに関心をもたれている経営者の方々が多いように感じます。

例えば、固定費を年間100億円削減しようというKPIを設定したとしましょう。 KPI達成に頭を抱えた現場担当者たちはどのように考えるでしょうか。
「毎年固定費削減の目標数値が設定されるが、一体どうすれば良いのか… 、そうだ、固定費を変動費にしてしまおうか」と考える現場担当者たちが出てきます。
その結果、固定費を目標どおり100億削減したとしても、そのうち60億円は変動費化しただけといったケースが考えられます。経営者は固定費を100億円削減したのだから利益も100億円増えるのではないか?と考えますが、実は総コストとしては40億円しか削減できていなかったということがありえるのです。

また、在庫金額の50億円削減というKPIを設定したとしましょう。「期末近くでの材料購入を減らせば、期末の在庫金額を減らせるじゃないか」と考える現場担当者が出てきます。その結果、期末では確かに在庫金額を50億円削減できたかもしれませんが、来期の第1四半期に売るべき製品・仕掛品在庫が減少して、第1四半期の業績が悪化してしまったという笑えない状況が起こってしまうのです。

いずれも、KPIの結果だけに注目し、どのような対策をすればKPIを達成できるかについてきちっと管理していなかったがために起こってしまったケースです。

経営者の指示の真意が現場担当者まで正確に伝達されなければ、このような本末転倒なことが起こってしまいます。
KPIの数字の結果だけに一喜一憂するのではなく、なぜこの部門や担当者は達成できたのかまで、目を配ることが大事だと思います。
組織が大きくなればなるほど、経営者と従業員との意思伝達が難しくなりますので、本来の目的と異なって伝わってしまわないように十分お気を付けください。