【脱属人化(1)】バックオフィス業務における属人化とは何か。そしてその属人化が発生する原因について

約3年に及んだコロナの影響も一段落して、社会のあちらこちらが落ち着きはじめ、以前のような生活にある程度戻ったと感じています。しかし、この3年の間に企業の働き方は大きく変わっていったという印象です。働き方改革が提唱されて以降、コロナ禍の影響によるテレワーク推奨の動きも相俟って、バックオフィス業務について改めて見直しをした方々も多かったのではないのでしょうか。
そんななか、経理、人事・総務の業務についてBPOを検討している会社も増加傾向にあります。今回はそのBPOを検討するきっかけとして、解消したい事象の一つとして挙げられる「属人化」に焦点を当て、現場の声をお届けしたいと思います。

  1. 属人化とは何か。そしてその属人化が発生する原因について
  2. 属人化が起こることで生じるさまざまな弊害
  3. 属人化の罠とBPO
  4. BPO内における属人化防止の取り組み
  5. 以上の4部構成でお話しできればと思います。

    まず属人化とはどういう状態なのかについて一般的にいわれている定義を紹介します。
    属人化とは、特定の社員が担当している業務の詳細内容や進め方が当人以外ではわからなくなってしまう状態をいいます。一般的にネガティブな意味で用いられており、担当社員が突発的に休んだ場合や退職した場合などに問題が顕在化します。

    例えば職場でよく目にするのが
    「○○さんが今日休みで、急遽対応しなければならない業務に誰も対応できません」
    「他部署から修正依頼が届いていますが、休暇を取っている○○さんに聞かないと修正方法がわかりません」
    などの言葉が飛び交っているような光景です。
    このような場合、休日を取得した担当者が会社に行って対応する、もしくは担当者が出社できない場合は、担当者が残した業務の痕跡を頼りに残った社員で何時間もかけて必死に解析し、対応するなどの方法で乗り切るしかありません。
    このように担当する社員以外の社員にとって、属人化した業務はブラックボックス化している状態といえます。
    ブラックボックス化とは、その言葉の意味からも想像できるとおり、まさに業務が黒い箱のなかで行われているようなイメージで、「仕事のプロセスがどのように行われているのかわからない状態」を指します。つまり、その業務を担当している社員以外の社員にとって、その業務がどのようなプロセスで行われているのかわからない状態ということです。
    このような業務のブラックボックス化が発生すると、上記の例のように担当者が不在となった場合、誰も対応できなくなることや、もっと深刻なケースでは担当者に不正の誘因がある場合、不正が発生し会社に多大な損失が発生する可能性もあります。

    このような会社にとって害となる属人化がなぜ発生してしまうのか。その原因について探っていきたいと思います。まず大きく分けて3つに分類できます。

    1.業務の専門性による要因

    業務内容の複雑さや専門性の高さは、業務が属人化する原因となり得ます。とくに専門的で高度なスキルが必要な業務では、誰もが同じスキルを持つわけではないので、スキルを持つ特定の人だけが複雑な業務を担当することになり、業務の属人化が起こりやすくなります。
    また、業務の専門性が高いと、その内容がわからない社員はその業務を敬遠するような状況が生じます。こうなると引き継ぎもうまくできず、結局のところ現在業務に精通している社員がずっとその業務に携わるようになり、属人化が維持されるようになります。

    2.間接部門としての会社都合による要因

    直接利益を生まないとされる間接部門の特性から属人化が生じることもあります。
    経理、人事・総務の仕事は間接部門であることから、コストをかけず効率化を第一優先に掲げている会社が多くあります。その場合、割り当てられる人員は最小限に抑えられ、一人ひとりのキャパシティとして最大限の仕事を抱えています。そのため繁忙期には最小人数で最大限の残業をすることで対応しているのが実情でしょう。
    これは、蔓延的な人手不足の状況に陥っているといえます。そしていざこのような状況を打破しようと新入社員を配属して育てようとしても、現場ではつねに業務に追われ、新入社員の教育に時間をかけようとしても実際は難しく、最終的に新入社員が会社を辞めてしまうこともあるなど、なかなかうまくいきません。また、転職市場から経験者を探そうとしてもなかなか自社の業務に合った経験を持つ適任者は見つからず、結局のところ現在の現場の社員がそのまま固定化され、いつの間にか属人化してしまっているという状況に陥ってしまいます。

    3.現場の業務担当者の保身による要因

    これは現場の担当者による意図的な属人化といえます。属人化することで業務を独り占めすることができるため、社員が社内で自分の立場を守るために意図的に属人化してしまうというものです。
    自分の仕事の内容が広く知られることや他人と比較されることを避けることで、自分の立場を優位にしたり、自分の存在に価値を持たせて評価が下がらないようにしたりといった意図のほか、明らかにしていなかったミスが知られてしまうことに抵抗するという目的も考えられます。
    また、ある業務を行う権限が特定の人に集中している職場でもそうした意図や目的がある場合があります。本当は別の社員でも対応できる業務にもかかわらず、「これは自分にしかわからないから」と仕事を抱え込み、共有や引き継ぎをしない場合もあります。このような状況は周囲からは指摘しづらいので、解消するのが大変難しい属人化の原因といえます。

    以上、属人化の原因を挙げてきましたが、専門性が高い業務だけれど効率化のためにはコストを抑えなければならないとか、現場担当者の保身などによる属人化は、少なからずどの企業も抱えている問題ではないかと思います。また、ほかにも多くの原因があり、属人化は簡単に生じてしまう経営課題といえます。
    我々BPOベンダー内でも属人化は大きな問題です。属人化を発生させないため日々戦っているといっても過言ではありません。
    このように属人化はさまざまな原因によって簡単に発生し、どの企業でも解消することが難しい問題です。このような属人化をそのまま放置した場合にどのような弊害が生じてしまうのか。次回お話しできればと思います。