【脱属人化(3)】バックオフィス業務の属人化の罠とBPO

前回は属人化によるさまざまな弊害についてお話しさせていただきました。これまで属人化はすべて悪いという前提でお話しさせていただきましたが、その属人化されるまでの過程でそれなりのメリットと思われるものがなければそもそも属人化はされないわけです。
そこで今回は「属人化の罠とBPO」と題して先に属人化につながる原因として考えられるものをピックアップし、さまざまな視点から属人化について深く考察していきたいと思います。次に、そのような属人化に対してBPOはどう機能し得るのかについて述べたいと思います。

まず、属人化の罠として属人化につながる原因としてどのようなものが考えられるのか。代表例を2つ挙げてみました。属人化によるメリットと捉えられる危険性があるものになります。

■属人化のメリット

1.早く効率よく業務を実施できることがある

ある業務に長年時間を費やし創意工夫を凝らした経験や技術があれば、当然その業務の経験がない人よりは早く効率よく業務が行えます。つまり担当者が高スキルの人であれば、マニュアル化なしでも業務遂行が可能であり、また1人で仕事を進めた方が早く効率よく業務を実施できることがあります。

2.担当者のモチベーションが高まる可能性もある

ある業務について自分にしかできない、またはその業務の裁量権を持っている場合、そこに価値を見出し、裁量権のある仕事を任せてもらえたということが人によっては本人のモチベーションを高めることがあります。また外部顧客から「あの人に頼めば間違いない」などの個人的な評価が得られた場合にも担当者のモチベーションは高まり、会社としても担当を変えづらくなります。

以上属人化につながる原因について挙げてみました。以前属人化の原因について述べさせていただきましたが、ここではその原因を違った角度で検証してみました。これらの誘因は属人化によるメリットとして捉えられかねない、いわば「属人化の罠」として存在するものです。
メリットを享受することに依存し、いつの間にか属人化が生じてしまっていると捉えることもできるでしょう。
まずはこの属人化がモチベーションを変化させるような根本的な問題にいかに深く関わっているか、そしていかに生じやすい性質のものなのかを理解することが大事だと思います。この部分を念頭に置いて対策を立てなければ、同じ属人化が他の業務でも起こってしまう可能性があります。さらに、このような属人化を放置しておけば「属人化の弊害」で述べたとおり、深刻な被害をもたらす結果となってしまいます。

次に上記のような属人化に対してBPOが一体どう機能でき得るのかを下記にまとめました。BPOによる属人化の解消・防止の観点から述べていきたいと思います。

■BPOによる属人化解消効果

1.属人化していた業務のプロセスの可視化が可能となる

属人化していた業務に対してBPOをすることになった場合、その業務についてのプロセスの把握が必要となります。そのためにはこれまでどういった処理を行っていたのかについて詳細なヒアリングをしていくことになります。
つまりBPOをすることが決まった時点でこれまで属人化していた業務の担当者はその業務内容をBPOベンダーに伝えなければなりません。BPOの実施によって、属人化した業務にメスが入り、ブラックボックス化していた業務プロセスが明らかになるイメージです。BPOの実施というその起点が属人化の解消に貢献していることになります。
そして詳細ヒアリングなどによって把握した内容をマニュアルとして整備することで、業務の可視化が可能となります。マニュアルによって可視化されることで、他の担当者もその業務の内容を理解し、実施もしやすくなります。これは暗黙知から形式知への変換ができたことを意味します。
ここで実際の現場はどうかというと、属人化していた業務は専門性も高く、複雑な処理となっているものが多いです。また業務内容を伝えることに抵抗する方も少なくありません。そこは我々もBPOベンダーとして担当者との粘り強いやりとりや横との連携などを駆使し、確実に移行を行っていくことになります。

2.属人化していた業務の移行や改善がスムーズに行えるようになる

BPOの実施によって業務内容が明らかになった属人化業務はBPOベンダーの担当者に引き継がれ実施されることになります。その後BPOベンダー内で別の担当者に業務を伝えることになります。さらに、いったんBPOベンダーに引き継いだ業務もお客様の担当者に戻すことも可能となります。その際、業務内容とマニュアルはセットで伝えられます。つまり属人化していた業務はBPOによって業務内容が明らかにされ、可視化されたマニュアルとセットにすることにより、その後の業務の移行がスムーズに行えるようになります。
また引き継がれた業務は可視化されているため、さらに効率的な方法を検討することも可能になります。これまで属人化していた業務がBPOによって効率化の対象としても認識されることになります。

以上、属人化業務がBPOによって解消されるケースを述べてきました。属人化の解消は容易なことではありません。そのなかで属人化に対してBPOは有効な手段の一つと考えて良いと思います。そういった意味でBPOは投資といえます。つまり属人的にやった方が効率的でコストも一時的にはかかりませんが、次の担当者が同じスキルであるという保証はありません。担当者交代のリスクを最小限にするには、BPO投資を行って業務を可視化する、その方が、長期的に見れば業務の安全性が高まると考えます。そのためにはお客様の業務担当者とBPOベンダーとの間で協力・信頼関係をいかに築けるかが重要といえるでしょう。

次回は最終回となります。「BPO内における属人化防止の取り組み」と題して、BPO内で行っている属人化を防止するための取り組みについて述べたいと思います。