【脱属人化(2)】バックオフィス業務の属人化が起こることで生じるさまざまな弊害

前回は属人化とは何か、その原因についてお話しさせていただきました。
今回の2回目では、その属人化によるさまざまな弊害についてお話ししたいと思います。
大きく3つ紹介したいと思います。

1.慢性的な人手不足 長時間労働

これについては前回の原因説明のところでも触れました。間接部門のコスト削減や効率化によって属人化が生じている場合、少数の人員で対応しており、またその業務に対応できる社員が限られて固定化されているケースが多く見受けられます。そのため一人ひとりの負担は大きくなります。必然的に社員の長時間労働につながります。
その対策として新入社員を配属し育てようと考え、その育成に時間をかける計画を立てるものの、少人数で業務に対応しており業務説明ができる社員も限られていることから、予定どおり時間を取れないことが多く、結果として新入社員は十分な業務説明を受けないまま業務を実施しなければならなくなります。そのようなストレスがかかる仕事に耐えられず、最終的には会社を辞めてしまうこともあります。また転職市場から経験者を探して対応を試みても、経験豊富な人財はそこまで多くはなく適任者を見つけられない場合もあります。さらに、その会社特有の業務だった場合は、新入社員ほどではないにしても業務に精通するまでは時間も負担もかかります。結局はこれまで対応していた固定化された少数のメンバーで、長時間労働によって業務をこなすことになってしまいます。
しかし昨今、働き方に対する意識の変化から企業は長時間労働の是正を迫られています。
以下は政府が提唱する働き方改革を進めるうえでの実態調査の結果になります。

働き方改革の取組を進める上での問題点
上位回答(複数回答あり)
割合
①人手不足 48.1%
②従業員の意識・価値観 43.4%
③特定の人に業務が偏りやすい、業務の属人化 35.4%
④繁忙期と閑散期のギャップや突発的な業務 30.9%
⑤職場の風土・雰囲気 27.9%

令和2年度(2020年度)働き方改革推進実態調査結果

働き方改革を進めるうえで問題点となるものとして、3位に「特定の人に業務が偏りやすい、業務の属人化」が挙がっています。1位の「人手不足」にも属人化の影響を与えていることが考えられます。この表からも属人化は働き方の改革をめざす企業の障害になっていると認識していることがわかると思います。働き方改革の目的の一つとして長時間労働の是正が大きなテーマとして掲げられています。しかしながら、どの企業もすぐに長時間労働を解消するのは難しいのが実情です。さらに今後、長時間労働の是正に向けて現在の規制がいっそう強化されることが予想されます。働き方を改革していくうえでも、早急に属人化への対策を立てることが必要になるでしょう。

2.業務のボトルネック化

前回説明したとおり、属人化によってブラックボックス化した業務については、その業務がどういったプロセスで成立しているのかわかりません。このような場合、その業務のなかにボトルネックとなるプロセスがあり、業務全体が滞っていてもそのことに気付くことはできません。
ここでいうボトルネックとは「業務プロセス全体のうち、進行の遅れ・停滞をもたらす部分」を指します。例えば、作業がA→B→Cという手順で進行し、BはAが終わらないと着手できない、CはBが終わらないと着手できないというケースにおいてBにボトルネックがある場合、Bの業務が滞ってしまうとCもその進行が遅れてしまいます。
つまり属人化している業務のなかにボトルネックとなるBのプロセスがあり、このことが業務全体の停滞をもたらしていたとしても対策を立てることが難しくなります。これを避けるためには、まず業務を可視化してボトルネックとなる部分がどこにあるのかを探す必要があります。例えばそのボトルネックとなる原因が実は簡単に仕様を変えるだけで解決するものや、他部署との調整によって簡単に解決するものの可能性もあります。
ただし、この業務の可視化も属人化している業務では難しいのが現状です。
属人化している業務は、そのなかで実は非効率になっているプロセスがあってもわからないケースや、ひいては業務全体が非効率になっているケースもある可能性があります。このように属人化は業務の改善や見直しをする際に大きな弊害となってしまいます。

3.不正・誤謬

属人化した業務では担当者による不正が起こっていてもほかからは気付かれにくく、横領などが起こる可能性も高くなります。
一昨年某大手コンビニチェーンで約4億円の横領事件が発覚しました。取引先企業と共謀し、業務委託料を水増しして請求させ、「予備費」名目で取引先にプールしていたそうです。
調査によると、その担当社員には長年同じ業務を一人で担当させており、このため、社内での監視機能が働かず、さらに定期的な業務チェックでも不正を発見できなかったそうです。
これは属人化による典型的な不正といってもいいでしょう。
このような不正は会社に大きな損害を与えるものであり、重大な事象といえます。
また、このような不正は従業員による意図的なものですが、従業員が意図しないミス、間違いである誤謬も存在します。属人化している場合はこの誤謬についても発見するのが難しくなります。通常、業務のなかで誤謬が発生した時は、可能な限り速やかに申告・共有し、損害が大きくなることを未然に防ぐことができます。しかし、属人化が恒常化していると、業務の進捗や現在の状況が見えにくく共有する機会が少なくなるため、誤謬に気付くまで時間がかかったり、ほかの社員の目が届かないぶん、誤謬が発生しても隠蔽してしまったりする可能性もあります。
このように属人化は不正・誤謬の発生について発見を遅らせ、また発見自体を困難にさせます。

以上、今回は属人化によるさまざまな弊害について紹介いたしました。このような弊害を生じさせないため属人化はなくしていく必要があります。そして次回は「属人化の罠とBPO」と題して属人化につながる誘因として考えられるものを取り上げます。次にそのような属人化に対してBPOはどのような機能をなし得るのかについて述べたいと思います。