同一労働同一賃金が問う「正社員とは何か」

2026年7月15日に配信された厚生労働省の人事労務マガジンでは、同一労働同一賃金に関する改正省令・告示やガイドライン改正の内容が改めて紹介されていました。2026年10月1日の施行が近づくなか、厚労省が周知を強化していることがうかがえます。
すでに対応を進めている企業も多いものと思います。ただし、ガイドラインの改正箇所に対応するだけでなく、この機会に自社の処遇全体を検証し、正規・非正規間で不合理な待遇差が生じていないかを改めて確認しておきたいところです。

この「不合理な待遇差」の有無は、手当てや処遇ごとに「1.職務の内容」「2.職務の内容および配置の変更の範囲」「3.その他の事情」を考慮して判断されます。
ここで注意したいのは、「正社員は会社にとって重要な人財だから」「優秀な人財を確保したいから」といった抽象的な説明だけでは不十分である点です。求められるのは、1~3の観点から、正社員と非正規社員との間にどのような職務や役割、責任、配置変更の違いがあるのかを具体的に説明することです。
したがって、検証を始めるにあたっては、非正規社員との相違点として「正社員に何を期待しているのか」を具体的に言語化することが必要です。つまるところ、待遇差の問題として語られることが多い同一労働同一賃金は、本質的には「正社員に求められる具体的な役割・貢献は何なのか」を裏から問うています。

しかし、実際のところ、この問いに対して明確に答えられる企業は決して多くないように思います。

これは同一労働同一賃金だけの問題にとどまりません。
正社員に期待する役割や貢献が曖昧なままであれば、等級制度は何を基準に区分されているのかがわかりにくくなります。評価制度においても、何を評価しているのかが曖昧になり、その結果、人事制度全体の整合性が揺らぐことになります。

だからこそ、今回のガイドライン改正を、自社の正社員像を見直す機会として捉えることが重要です。正社員に求める役割や貢献を改めて言語化し、その内容を等級定義や評価基準などに反映していくことが、人事制度全体の納得感を高めることにつながります。

同一労働同一賃金への対応の本質は、処遇の見直しだけでなく、自社の正社員像の再定義と人事制度への反映にあるといえるでしょう。